メキシコの電力自由化市場を激変させる法案

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3月 10, 2021

エネルギー改革に反対する勢力が、ようやく軌道に乗り始めた現在のメキシコの自由化された電力市場を大幅に後退させるための法案を議会に提出しました。

この法案の内容は以下のようなものです。

1-経済給電ルールの改革。経済給電(発電設備の効率的運用を行うため系統的制約下で発電所の最小コスト給電システムを指すこと。電力需要の変化に応じて、効率の異なる各発電機の経済的な出力配分を計算し、発電機出力を制御する。一般的にはこの制御と負荷周波数制御(LFC)を組み合わせて発電出力を制御している。この手法は各発電機の出力増加に必要な経費を等しくなるように配分すれば最も経済的になるというものである。)の優先順位は、(1)水力発電所、(2)技術に関係なくCFE発電所、(3)IPP(CFEとSaaviなどの民間企業間のPPA)、(4)再生可能エネルギー、(5 )複合サイクル。

これは高裁が違憲とした昨年のSENERと同様の方法で、現在の経済的配分を修正することが提案されています。

2-発電許可は、「制限される」ことになります。これは発電許可がほぼ独占的にCFEに与えられ、民間に新しい許可が与えられないことを意味します。

3- CEL (Clean Energy Certificate) はすべてのクリーンエネルギーに付与(制限はなくなる)されます。CFEは現行法とは逆に、水力発電所とラグナベルデ (Laguna Verde) 原子力発電所からCELを発行することにより、CEL市場とその価格を弱体化することを狙っています。

4- CFE Basic Supplyがオークションを通じてエネルギー、容量、CELを取得する義務を廃止します。これは2020年11月から12月までのCRE決議に沿ったもので、現行法に違反しています。

5- CREは、「Fraud of the law」(法律を悪用したり、解釈をゆがめること )行ったと判断した場合、発電許可を取り消すことができます。CREの主張は、発電事業者の一部は法律を逆手に取り、不当に事業を拡張し収益を上げている。一部の発電事業者には発電プロジェクトを支える1,000を超えるエンドユーザがいて、それを持つことができないCFEの業績を圧迫している、とCFEは主張しています。

6- IPP (Independent Power Producers) 契約のレビューは、「収益性」を考慮して実行されます。 CFEは2019年のガスパイプラインと同様の方法で、PPA (Power Purchase agreement)について民間事業者(Iberdrola、Engie、Saaviなど)と再交渉したいと考えています。

これは「優先的」法案です。したがって提出から最大31日以内に、本会議で議論および投票する必要があります。その後、上院に送付し、同様に最大31日以内に議論して投票します。承認された場合、現在のマーケットルールの変更は6か月以内に施行されます。

Number 番号 Proposal (P) 提言 Estimated Impact(EI) 影響
(P) 1経済給電ルールの改革。給電の優先順位は、(1)水力発電所、(2)技術に関係なくCFEの発電所、(3)IPP(CFEとSaaviなどの民間企業間のPPA)、(4)再生可能エネルギー、(5 )複合サイクル
(EI) これらの発電所は経済的メリットに基づいて市場に給電されていないため、提言された給電規則が、発電所とじかに契約 (Self-Supply Contract: SC) している場合にどのように影響するかは不明です。ただし、CFEは、SCから得られる余剰エネルギーの量に制限を設けることができます。

(P) 3 CEL (Clean Energy certificates) は制限なく全てのクリーンエネルギーに付与されます。これによりCFEは、現行法で確立されているものとは逆に、水力発電所とラグナベルデ原子力発電所からCELを発行し、CEL市場とその価格を弱体化することができます。

(EI) 国営の電力会社はCELを作ることが可能で、市場でそれを購入する必要がありません。よってCFEはこの法案が通れば大きな恩恵を受けるでしょう。これは市場でのCELの供給過剰と、価格の崩壊につながる可能性があります。

(P) 5 CREは, 発電会社が違法または法律を悪用し発電許可を取得した場合、それを取り消すことができます。

(EI) CFEと現政権は、現在発電会社に与えている許可を取り消すことができる権限をCREに与え、発電会社とエンドユーザの取引を廃止したいと考えています。なぜなら発電会社の多くが法を悪用し利益を上げていると考えているからです。もちろんそのような事実はありません。

(P) 6 IPP契約のレビューは「収益性」を考慮して行われれます。 CFEは2019年のガスパイプラインと同様の方法で、民間企業(Iberdrola、Engie、Saaviなど)とPPA契約の再交渉を望んでいます。
(EI) 発電ポートフォリオのほとんどがCFEに委託されているため、主な影響を受けるのはSaaviです。 Saaviは単に計画を実行するだけのオペレータで、PPAの大半はCFEが燃料を提供し、電力の唯一の購入者であることは注目に値します。 よってCFEがPPAに関連する固定費または変動費/料金について再交渉する可能性も十分にあり、そうなればSaaviの経済的な継続性や採算性を脅かすことになります。

このシナリオによりSaaviの所有者であるActisは、メキシコを離れるためにプロジェクトの売却先を探し始める動きに出るかもしれません。条項6.01(b)によれば、Saaviは法律の運用またはその他の方法により、開始日後の制限なしにESLPの所有権を売却、または譲渡することができます。ただし、新しい所有者がSaaviと同等以上の信用力を持っている場合に限ります。なぜなら Saaviと実質的に同様の方法で、本契約に基づく義務を履行する必要があるからです。End of 6

Acclaimが相談した法律の専門家と市場参加者の意見は、これらの法案の大部分は違憲であり、NAFTA2.0などのメキシコが署名した国際条約に違反していると指摘しています。ですから議会で正式に議論される前に除外または修正される可能性もあります。しかしもし仮にこの法案が承認されれば、かなりの数の差し止め命令と訴訟が行なわれることは容易に想像がつきます。

経営トップ並びにエネルギー担当の責任者は、「法改正」によるサプライヤとの契約への影響を調査し、契約内容の見直しや、今後数か月に起こりうる最悪のシナリオに備えることお勧めします。

エネルギーコストが会社に与える影響の大きさを考えれば、早急な対応が必要です。Acclaim Energyは引き続きこの状況を監視し、逐一重要な情報やアドバイスを提供していきます。

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