メキシコにおける天然ガスの可能性
天然ガスの利用は、あらゆる国の製造業が競争力をアップするための重要な手段です。
エネルギー消費にかかるコストは、一般的にどの企業にとっても経費の上位5項目の1つであり、安全で信頼性が高く効率的な電力と天然ガスの供給は、事業による収益を維持するための鍵となります。国家の長期にわたる成長は、一つにはエネルギー部門が安全で信頼できる、比較的安価でクリーンなエネルギーを提供できるかどうかにかかっています。メキシコは現在、北米の安価な天然ガスの恩恵を受けています。発電所および製造プラントは低価格の天然ガスによってコストを削減しています。天然ガスは他の化石燃料よりもクリーンなエネルギー源であり、よりクリーンな未来を実現するための重要な役割を果たしています。
メキシコには、メキシコ湾沿いとその周辺海域に大規模な天然ガスと未開発の有望な資源があり、さらに石油・ガス会社が探査し産出すべきシェール層がメキシコ北部に存在しています。この機会を最大限生かすには、政府は全てのバリューチェーンに対し適切な規制をすべきです。メキシコはこの10年間でかなり進歩しました。とりわけ最近できた法律や規制、政府機関の存在があります。それらは利害関係によって生じる摩擦を減らし、契約の透明性を高め、輸送システムを専門化し、市場が機能不全に陥らないように働いています。
例えば、新しい組織、法律、規制によって輸送と流通にかかるコストが下がることによって競争が促進され、サプライヤも新しい顧客獲得のために価格を下げサービスを向上し、結果として消費者にとって有益な選択肢が増えました。最近メキシコで拡張された天然ガスパイプライン輸送システムも強みです。政府は天然ガスのパイプラインに関し、国営と民間の両方の構想を持っています。 現在国が大部分のパイプラインを運営していますが、民間企業は北西部、湾岸、中央メキシコで独自にパイプラインのシェアを拡大しています。今後、天然ガス輸送の大規模な構築により天然ガスの地理的範囲が拡大し、パイプラインが到達するほぼすべての場所へ必要なだけ輸入した天然ガスを輸送することが可能になります。
ただ天然ガスのパイプラインと貯蔵庫は、その数も機能もまだ十分ではありません。政府は現在必要なすべてのガスをユカタン半島に供給しているため、天然ガスを必要とするGuerrero、Oaxaca、 Chiapasと言った、経済発展のためにこの恩恵をまだ受けていない地域にパイプラインを拡張する必要があります。また 貯蔵庫の機能向上も安定供給のために重要な課題です。
さらに、国の送電システムのオペレーターであるCENAGASが運営する従来型パイプラインの近代化、つまり制御システムの改善とより安全な運用かつ維持費削減を同時に可能にする技術が必要です。
探査と産出において最大の課題は技術です。米国で最近開発された水平掘削と水圧破砕の技術が、これまでにない有望なメキシコのシェールガス田でも有効であることを証明しなければなりません。もしこれらの技術が、法律に定められた最高基準の安全性と持続性の下で、価格的競争力のある天然ガスを産出できれば、メキシコの将来にどれほどの価値があるか計り知れません。
いま天然ガスの普及に必要なことは、すべてのバリューチェーンの効率を向上させるために政府、企業、および消費者全員が協力し合うことです。公的及び民間投資が連携して、輸送と備蓄のためのインフラと技術開発が行われれば、安全性と信頼性が向上し、コストが削減され、天然ガスが効率的に国内すべての地域に行きわたることになります。そして法律や規制の適切な運用によって、すべてのバリューチェーンで競争原理が働き、その結果メキシコの競争力が高まり、最終的に消費者にも利益をもたらすことになるでしょう。