エネルギー計画、安定供給、およびクリーンエネルギーへの移行は問題山積

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7月 20, 2021

2021年の夏の始まりとともに、カナダの西海岸と米国北西部は記録的な暑さを経験しています。テキサス州とカリフォルニア州では、6月初旬に熱波が発生し、独立系システムオペレーター(ISO)が電力停止を回避するため、米国で最も人口の多い2つの州で省エネ命令と運用アラートを発令し、テキサス州とメキシコ北部で大停電を引き起こしました。これは米国でガソリン価格の急騰を引き起こした2月の記録的寒波の後に発生しています。 そしてエネルギー供給の安全性と極端な気象条件下で、なぜ安定的な電力供給がうまく行かないのかについての議論が巻き起っています。

これについては再生可能エネルギーの割合が多すぎると主張する人もいれば、電力供給が低下した場合の対応策が不十分であったと非難する人もいます。ただ本当の理由が何であるかにかかわらず、世界中のISO、政策立案者、およびエンドユーザーが気候変動の影響を受ける電力市場に対応するために、新しい対応策、計画シナリオ、およびエネルギー供給戦略を必死に検討しているというのも、また事実です。

安定したエネルギー供給、回復力、低炭素で効率的な電力インフラストラクチャの問題を同時に解決するのは、「良質で早くて安い」という3つの概念のうち2つしか達成できない、いわゆる「鉄のトライアングル」に似ています。例えば、費用を無視して最先端の電力網を持つことは不可能です。なぜなら将来の電力市場と送電網の計画は、費用対効果によって判断されるからです。

この問題を克服するには、考えられるさまざまなシナリオを考慮し、現在の傾向からはるか先を考え、論理的な方法で直面する複雑な問題に取り組むことです。
将来の電力市場を計画する際に、以下のことを十分に考慮しなければいけません。
• 異常気象がより頻繁に発生する可能性が高く、電力インフラストラクチャの回復力が重要。
• 家庭用電力や大口エンドユーザが二酸化炭素排出量とコストを削減しようとすれば、国内規模での再生可能エネルギーの需要は引き続き増加する。
• 大口エンドユーザのオンサイト発電(自社発電)機能を通じて分散型エネルギー供給が広がる。
• 電化による輸送の増加は、電力需要の増加につながる可能性がある。

ここで重要なことは、電力料金がグリッド(送配電網)を近代化するために設定されることです。電気料金の設定は、グリッドへのエンドユーザーと発電会社の投資を導き、短期および長期での信頼性、運用コスト、およびエネルギー価格に大きな影響を与えるでしょう。そして エネルギー価格は、エネルギー消費と既存の大手発電会社の設備投資に影響を与えるエンドユーザーに強力なシグナルを送ります。

たとえば従来の料金設定では、発電会社が大規模な集中型発電設備ですべての顧客の電力需要を満たすことを前提としていました。 しかしこのモデルは、テクノロジーの進歩と蓄電池を含む分散型小型電源が発電会社とエンドユーザーの両方に利益をもたらすため、段階的に廃止されつつあります。よって将来の方向性としては、以下のような理由で電気料金が決まって行くと考えられます。
• 需要が変動する環境の中で、発電会社に安定した収入を提供できる。
• 電力網を維持および開発するのに十分な収入を得れることができる。そして
• エンドユーザーが省エネを行い資源を大切にしなければと思うような料金設定にする。

既にお判りのように、問題は複雑であり簡単ですぐにできる解決策はありません。ただ政府およびISOによる計画は、グリッドの複雑さ、また予期しない気候変動などによるエネルギー消費の変化に適応するために十分包括的かつ柔軟でなければなりません。 そのため計画をたてるプロセスでは、これらの問題に詳しい全ての関係者が参加し、グリッドを近代化するためのロードマップを作成する必要があります。またそれは、回復力、競争力、信頼性、効率、およびコストと、広範囲にわたり影響を与える正しいポリシーと規制が導入されることにもなるでしょう。

いま企業のリーダーは、この不確実性の中で自社がどうすればこの取り組みに貢献し、また自社の発展に利用できるかを考えるべきでしょう。

 

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